ショックとは?
前回、応急処置についてお話ししましたが、今回は応急処置が必要なショックについてお話しします。
ショックとは急性になおかつ全身性に起こった末梢循環不全の状態です。
収縮期血圧が90mmHg以下で全身の臓器・組織に循環障害が起こっている状態で、出血、細菌感染、アナフィラキシー、不整脈などさまざまな原因により誘発される救急疾患です。
ショックによって、肺、肝、腎、消化管、血液凝固系、免疫系などの重要臓器に機能障害がおこります。
さらに複数の臓器が障害されると多臓器不全となり、死に至ることもあります。
◆原因
①循環血液量減少性ショック
急速に循環血液量が減少し、十分な血圧が保てなくなったために起こります。
外傷、内臓破裂、消化管出血、嘔吐、下痢、脱水、熱傷など
②心原性ショック
心臓の機能が低下して、十分な血液循環を保てなくなり起こります。
僧帽弁閉鎖不全症、心筋症、犬フィラリア症、心臓腫瘍など
③敗血症性ショック
細菌の全身感染症によって起こる細菌性ショックと、ある一定の細菌が放出する菌体毒素(エンドトキシン)によるエンドトキシンショックに分類される。エンドトキシンショックは毒素によって血管平滑筋が麻痺して末梢血管抵抗が低下し、静脈環流が減少するために起こります。
④アナフィラキシーショック
アレルギー反応の一種。外来抗原に対する過剰な免疫応答が原因で、血管透過性が亢進し、末梢血管が拡張し、循環血液量が低下し、ショックに陥ります。
食物、ワクチン、抗生物質、麻酔剤、造影剤など。
⑤神経原性ショック
迷走神経反射や血管運動中枢を抑制し、末梢血管が拡張し、循環血液量が低下して起こります。
脳の外傷、頭蓋内の出血、充血、浮腫など。
◆ショックの診断基準
●血圧低下
収縮期血圧が90mmHg未満、あるいは基礎値より40mmHg以上低下することをいいます。
●小項目
①心拍数160回/分以上(犬)、250回/分(猫)
②微弱な脈拍
③CRTの延長
④意識障害または不穏・興奮状態
⑤乏尿・無尿(0.5mL/kg/時間以下)
⑥体温:37.8℃以下または39.7℃以上
※血圧低下+小項目3項目以上の場合をショックとします。
◆治療
直ちに血圧をあげて速やかにショックからの離脱を図ります。
輸液および強心薬などの投与、酸素供給(人工呼吸)により、循環状態を安定させます。
また、ショックの原因を取り除く治療を行います。
①循環血液量減少性ショック
出血部位の止血を行い、急速に多量の輸液や輸血を行い、循環血液量を回復させます。
②心原性ショック
心拍出量を増加させるために強心薬(ドパミン、ドブタミンなど)を投与します。さらに原疾患の治療を行います。
③敗血症性ショック
化膿巣病巣の除去や抗生物質の投与を行います。
④アナフィラキシーショック
ヒスタミンなどの影響により末梢血管が拡張しているので、血管収縮薬(エピネフリン)を投与します。
⑤神経原性ショック
脳浮腫や脳圧を低下させる処置を行います。
ショックは、様々な臓器に悪影響を及ぼし、最終的には多臓器不全を引き起こし、死にいたる場合もあります。
ショックは、より速い診断および的確な治療を行い、多臓器不全に陥らないようにすることが重要です。
※ 全院で、夜間診療は行っておりません。