犬・猫の腫瘍とは
近年、ワンちゃん・ネコちゃんの腫瘍は増えてきてます。
ワンちゃん・ネコちゃんの寿命が以前に比べて延びてきたため、高齢になって腫瘍ができることが多くなってきたのです。
また、飼い主さんがワンちゃん・ネコちゃんの健康に気を配り、定期検診などをきちんと行うようになって、早期に腫瘍を発見できるようになったからでもあります。
腫瘍でたくさんの犬・猫が亡くなっています。
その一方、腫瘍を早期に発見し、早期に治療することによって、完全に治すことができたり、治療後に何年も長く生きる例もあります。
腫瘍は誰もがかかる病気です。飼い主さんは腫瘍について知り、大切なワンちゃん・ネコちゃんの腫瘍を早期に発見し、早期に治療を行って、一日でも長生きできるように守ってあげましょう。
★腫瘍とは★
ペットを含めた私たちの体は何億という細胞で作られています。細胞は常に新しく作られ、古いものと入れ替わって一定の秩序を保っています。
何かの拍子で細胞の一部が変化を起こし、増殖したものが腫瘍です。腫瘍は悪性腫瘍と良性腫瘍に分かれます。
悪性腫瘍は、腫瘍細胞が無秩序に異常増殖を始めたもので、ガンと呼ばれます。ガン細胞は周りの正常な組織を破壊しながら広がったり(浸潤)、血液やリンパの流れに乗って体の他の場所で増殖したり(転移)するのが特徴です。また、ガン細胞は普通の細胞より増殖速度が速いため、あっという間に大きくなり、細胞があちこちに分散して全身に広がってしまうこともあります。最終的には命を失うことになります。
良性腫瘍は、一ヶ所で増殖するだけで浸潤や転移はしません。増殖速度も遅いことが多いです。ただ、良性腫瘍によっては悪性腫瘍へと変化するものもあるので、注意が必要です。
★腫瘍の種類★
●腫瘍は、さまざまなものがあります。
●皮膚腫瘍
肥満細胞腫、扁平上皮癌、黒色腫、肛門周囲腺腫
脂肪腫、組織球腫、乳頭腫、皮脂腺腫、皮内角化上皮腫、毛包腫瘍
●悪性リンパ腫
●乳腺腫瘍
●精巣腫瘍、前立腺腫瘍
●口腔の腫瘍
●消化器の腫瘍
●泌尿器の腫瘍
●血管肉腫
●骨肉腫
★腫瘍の治療法★
<外科的治療>
●外科的にガンを切除する方法です。
●腫瘍が局所的であり、浸潤性も比較的少なく、ガンが転移をしていない場合、積極的な外科的治療が推奨されます。
●大きな腫瘍は化学療法や放射線療法だけでは効果があまり期待できないため、外科的に切除した上で化学療法や放射線療法を行うこともあります。
<化学療法(抗ガン剤治療)>
●抗ガン剤を使ってガン細胞を抑える治療法です。
●化学療法は造血系由来の腫瘍に対して第一選択として用いられることが多いです。
●外科的に切除できないガンや切除してもガン細胞が完全に取りきれていない可能性がある場合に行います。
●抗がん剤は何種類もあって組み合わせて使うことが多く、ガンの種類や症状の進行具合によって適切なものを選択していきます。
<放射線療法>
●ガン細胞に放射線を当てて死滅させる方法です。
●外科的摘出が困難な腫瘍に使用されます。
<免疫療法>
●体内の免疫力を高めてガン細胞を攻撃する方法です。
●体内のTリンパ球を体外で分離・培養し活性化させ、患者自身に再び戻すという非特異的免疫療法や樹状細胞(DC)を単球から分化誘導し、患者自身のガン細胞と体外で融合させる特異的免疫療法(DCワクチン)等があります。
<サプリメント>
●抗腫瘍効果が期待されるサプリメントを用いて、腫瘍細胞の増殖を抑制する効果があります。
どの方法にもメリット、デメリットがあるので納得がいくまで獣医師から説明を受け、ワンちゃん・ネコちゃんや家族にとって最も良い方法はなんなのかをよく話し合いましょう。よく話し合った結果、治療を行わない、という選択をすることもあるでしょうが、どの方法を選択したとしてもあとで後悔のないように考えてから決定しましょう。
★もし、ガンになってしまったら★
愛するワンちゃん・ネコちゃんがガンになってしまったら、もしかしたら治らないかもしれないと思って、辛いことと思います。でも、泣き顔で接していたら、ワンちゃん・ネコちゃんも飼い主さんの気持ちを感じ取って沈んだ気持ちになっていきます。飼い主さんはワンちゃん・ネコちゃんに一番いいことは何か、少しでも痛みや苦しみを感じることなくいられるためにはどうしたらいいのか、希望を持って前向きに家族みんなで話し合い、ワンちゃん・ネコちゃんには笑顔で接してあげましょう。
次回からは、それぞれの腫瘍についてお話していきます。
※ 全院で、夜間診療は行っておりません。