犬フィラリア症のお話
<犬フィラリア症とは>
・犬フィラリア(犬糸状虫):体長20~30cmの白くて細長い寄生虫です。
・犬フィラリア症とは、フィラリアが心臓や肺動脈に寄生することにより起こり、徐々に血液の循環が悪くなり、心臓・肺だけでなく、肝臓・腎臓などにも異常をきたし、死にいたることもあります。
<犬フィラリアのライフサイクルと感染経路>
・成虫:
↓ 寿命約5年
↓ メス:25~30cm オス:10~20cm
↓ メスは、ミクロフィラリアを産出(約5000匹/日)
・ミクロフィラリア
↓ 約0.3mm(顕微鏡で観察可能)。
↓ 蚊の吸血時に蚊の体内に入る。
・第2期幼虫
↓
・感染幼虫
↓ 蚊の吸血時に犬の体内に入る。
・体内移行幼虫
↓ 犬の組織内で発育します。
・未成熟虫
↓ 血管に侵入し、心臓や肺動脈へ移動する。
・成虫
<犬フィラリア症の症状>
・咳をする。
・呼吸が荒くなる。
・元気・食欲がなくなる。
・興奮した時に失神して倒れる。
・お腹に水が溜まってくる。
・血尿がでる。
・症状がすすむと死に至る。
<犬フィラリアの検査>
〇血液検査
・ミクロフィラリアの検出
→血液をスライドに一滴垂らして、顕微鏡で観察する。
・成虫の分泌抗原の検出
→簡易キットで検査
〇超音波検査
・心臓内にいる犬フィラリア虫体の確認
・心臓の病変の判断(心室・心房の拡張など)
〇レントゲン検査
・心臓・肺・気管支の病変の判断(心肥大など)
<犬フィラリア症の治療>
①成虫駆除薬の投与
②外科的に摘出
③対症療法・保存療法
<犬フィラリア症の予防方法>
①経口剤の投与
・毎月1回飲ませる。
・蚊が出始めて1ヶ月後から蚊がいなくなって1ヶ月後まで。
・フィラリアの幼虫を成虫になる前に(心臓に寄生する前に)駆除する。
・ビーフ味のチュアブルタイプは、ワンちゃんが喜んでたべてくれる。
・犬回虫や犬鉤虫の駆除も行うことができるタイプのものもある。
②スポット剤の投与
・経口剤と投与間隔は同じ。
・経口剤を飲まないワンちゃんにお勧めです。
③注射
・1回の注射で6ヶ月間の予防ができる。
・アナフィラキシー様ショックが起きることがあり、死亡例が報告されている。
※フィラリア症の予防を忘れたら・・・
感染率
5月末~12月末 0%
7・8月~12月末 2%
5月末~10月末 30%
非予防犬 ? 38%
※12月まで飲ませることが大切です。
<犬以外の寄生動物>
・ネコ ・フェレット ・タヌキ
・オオカミ、キツネ、アライグマ、ツキノワグマ
・レッサーパンダ、ミンク、トラ
・アシカ、アザラシ、ウマ、シカ、ウサギ
・ヒト
<猫のフィラリア症>
〇症状
・喘息のような咳や呼吸困難、嘔吐が見られたり、突然死することもある。
・1匹の寄生で死に至るケースもある。
・犬の場合、フィラリアが100匹感染すると、約75匹が成虫になるが、猫の場合は、成虫になるのは3~10匹だけとも言われている。
〇診断
・フィラリアの寄生数が少ないため、検査で陰性になる場合が多く、診断が難しい。
〇治療
・成虫駆除ざいの投与は、副作用が出る可能性が高いため、あまり行わない。
〇対症療法
・フィラリア寄生に伴う炎症や咳を抑えるために、ステロイド剤や気管支拡張剤の投与を行う。
〇予防
・月に1回、予防薬を投与する。
<人の犬フィラリア症>
・通常、感染しても幼虫あるいは未成熟虫の段階で死滅するため、症状がでることは非常にまれである。
・死滅した虫体が肺動脈に詰まり、肺に腫瘤を形成する。
・咳などの症状が出たりする。
※ 全院で、夜間診療は行っておりません。