老齢犬について知ろう ~①認知症~
近年、医療技術の向上に伴い、長寿の方が増えています。
長生きとは単に年齢を多く重ねただけではなく、身体や脳の老化も起きてきます。また〝認知症″が出てくることも少なくありません。
見た目は元気でも身体の中は日々確実に衰えていってるのです。
脳の老化はワンちゃんの世界も同じです。
私達の飼っている動物達も長寿社会へと変わってきています。おうちにペットがやって来た時には考えもしていなかった『ペットの介護』を真剣に考えなくてはならなくなってきました。
そこで今回、ワンちゃんの認知症の症状と簡単な対処方法についてまとめてみました。
~13才以上のワンちゃんにおける認知症テスト~
①夜中に理由もなく大きな声で鳴き出す。
②ウロウロと円を描くように徘徊をする。
③狭い場所や部屋の隅に行きついた際に立ち止まってしまい、後方への
方向転換がうまくいかない。
④飼い主が分かっていない様子で、名前にも反応がない。
(何事にも無反応)
⑤食欲があり、便の状態もいつもと変わらないのに痩せてきた。
上記の5項目中1つでも当てはまれば認知症の疑いありといえます。
2つ以上該当すれば認知症の判定となります。
お電話でご相談頂く機会が多いのが①の夜鳴きです。
「ご近所から苦情がきて困っています。
一晩中鳴いて家族みんな眠れません。おかしくなりそうなんです…。」
①の夜鳴きが出ている子の多くが日中はひとりで留守番しており、ほとんど寝ているようです。
ご家族の皆さんがお仕事で家を空けられる場合は難しいですが、夜鳴き対処法の1つとして日中は出来るだけ起こしておき、夜に眠くなるように生活のリズムを調節してあげるといいかもしれません。
また、天気のいい日はできるだけ日光浴をさせて、お散歩が可能ならば少しだけでも外に出て、外からの刺激を与えるのもいいです。
(歩行が困難な子でも抱っこして外に連れ出してあげたり、ベビーカーに乗せるなどして外気や音などの刺激をあたえてあげましょう。
ただし、老齢犬は温度変化で体調を崩しやすいので冷えないように、また暑すぎないように気を付けてあげましょう。)
◆寝たきりの子の場合は、身体の自由がきかないことからいろんなことを訴えるために鳴くことが多いようです。⇒体の向きを変えてほしい、立ち上がりたい、お水を飲みたいなど…。
②③のような徘徊がみられる子には角のないサークルを用意してあげましょう。
常に側についてお世話をするのは飼い主さんの体力や精神的にも厳しいです。
チャイルドサークルを使ったり、通常の大きめのサークル内側にお風呂場マットなどを用いて丸めに囲ってあげるとぶつかっても痛くないです。行き止まりがないのでグルグルと徘徊して、疲れたらその場で休んでしまいます。
小型犬の場合は家庭用のビニールプールもいいと思います。
④いろいろな感覚が鈍くなってくるのは人もワンちゃんも同じです。
眼が見えにくくなったり、鼻がきかなくなってきます。
もちろん耳も遠くなるので、飼い主さんを認識することが困難になってきます。
これらの症状は改善が難しく、突然身体に触れたり抱っこをすると驚いて反射的に咬みついてしまうことがあります。
まずは大きめの声で名前を呼び、ゆっくりと身体に触れてあげましょう。
身体を触ってあげるときの順番を決めてあげたり、必ず最初に触る場所を同じにすると飼い主さんと認識しやすいようです。
⑤年齢を重ねていくと代謝が低下したり、栄養の吸収が悪くなります。
が、口腔内に何か問題(高齢では歯槽膿漏などが多い)があり、食事が実はうまく摂れていなかったりすることも…。
また、腰脊椎疾患などがあると前屈姿勢が辛いために食べる動作はしていても胃の中には入っていなかったりすることもしばしばあります。この場合は台を設けるなどして食器の位置を少し高めにしてあげると食事を摂りやすいでしょう。
食事だけでなく、飲み水も十分に飲めていないと脱水症状をおこしてしまいます。
毎日の食事・飲水量を必ずチェックして、栄養失調や脱水に気を付けてあげましょう。
★認知症や異常行動(夜鳴きや徘徊)のコントロールには不飽和脂肪酸(EPAやDHA)の摂取が有効だと言われています。
最近ではワンちゃん用のサプリメントも?出ていますので早いうちから進行を抑えていきましょう。
いつも一緒にいても小さな変化にはなかなか気づけないものですが、
いつも一緒にいるからこそ見つけてあげられる症状や異常はあります。?
些細な変化や不安、気になることがあればお気軽にご相談ください。
次回は老齢犬についてのつづき、②寝たきりのワンちゃんのケアについてご返答したいと思います。
※ 全院で、夜間診療は行っておりません。