男の子の病気について②
さて、今月は「前立腺肥大」についてお話いたします。
タイトルにもあるように前立腺は男の子特有の臓器で、成人男性と同様に、加齢と共に肥大してきます。
正式には「良性前立腺過形成」といいます。
6歳以上の去勢していないオス犬でよくみられ、精巣から分泌される雄性ホルモンであるアンドロゲンと雌性ホルモンであるエストロゲンの間にアンバランスが生じる結果として起こるとされています。
9歳以上の去勢していないオス犬は、ほとんどみんな前立腺肥大になっているとする報告もあるようですよ。(正直、これは私もびっくりです)
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どんな症状がでるかというと、通常なら、前立腺肥大(良性前立腺過形成)の場合、何も症状がみられないワンちゃんの方が多いです。
しかし、前立腺が大きくなることにより、骨盤のなかで直腸や尿道を圧迫するようになると、しぶり(排便時や排尿時に出にくい・いきむこと)、ひらぺったい便、血尿、排尿困難などがみられる場合もあります。
また、良性前立腺過形成のワンちゃんは、ほかの前立腺疾患、たとえば、前立腺炎、前立腺膿瘍(前立腺に膿がたまる)、前立腺のう胞(前立腺に袋ができる)などを起こしやすくなるともいわれています。
いずれにしても、症状が出ている子は、治療をする必要があります。
治療方法は大きく2つに分かれます。
治療① 去勢手術
去勢するとアンドロゲンが出なくなるので、前立腺への刺激がなくなり、
通常、術後3週間以内には前立腺の大きさは50%に縮小し、
排便や排尿時の異常は2~3ヶ月以内に治まります。
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治療② 内科治療
薬物療法としては、抗アンドロゲン製剤を使用します。
抗アンドロゲン製剤は雄の動物に対して抗男性ホルモン作用を示し、
去勢手術と同様に前立腺の縮小効果をもたらします。
去勢を希望されない場合や、高齢で麻酔が難しい場合に考慮されます。
投与後1週間で、前立腺の大きさは70%くらいに縮小し、投与後2週間では
大きさは60%ほどに縮小します。
ただし、精巣は残っているため半年から1年後に再発をみとめることがあります。
前立腺肥大による排便や排尿の異常が疑われる場合は、レントゲン検査や超音波検査を行い、異常がないか確認します。
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上の写真は前立腺肥大の15歳のワンちゃんです。
直腸の下で前立腺が肥大し、やや圧迫しています。
上の2枚の写真は、前立腺肥大と前立腺のう胞のワンちゃんです。
左の初診時には、膀胱炎も併発しており、膀胱内は超音波検査で
白っぽい液体が溜まっていましたが、抗生剤を2週間内服して、
右のキレイな膀胱になりました。
前立腺は大きいままなので、今後はそちらの治療も必要です。
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前立腺肥大は、発症してからでも治療が可能なことが多いですが、
前立腺肥大の予防や、前立腺肥大に伴う他の前立腺疾患(前立腺炎や前立腺のう胞、前立腺膿瘍など)を予防を考えた場合には、早期の去勢手術が有効です。
うちの子、どうだろうと心配な場合は、どうぞご相談下さい。
※ 全院で、夜間診療は行っておりません。